女性管理職比率が高い会社は、給与の男女差も小さいのか。274社で数えた
本記事の数値はすべて各社の有価証券報告書(提出会社・単体)から取得し、取得日時点の原文を確認しています。各社のページに出典リンクと確認日を掲載しています。応募前に必ず最新の公式情報をご確認ください。
「女性管理職比率が高い会社なら、女性も働きやすいはず」。就職や転職の場面で、そう考える人は多いと思います。
では実際に、女性管理職比率が高い会社は、給与の男女差も小さいのでしょうか。
福利厚生JPに収録している1,082社のうち、有価証券報告書を出典として3つの指標——女性管理職比率・男性の育児休業取得率・男女の賃金の差異——がそろっている274社で数えました。
先に結論:この2つは、関係がありません
3つの指標の関係を相関係数で見ると、こうなります。相関係数は「片方が高いと、もう片方も高いか」を −1 から +1 で表した数字です。+1に近いほど一緒に動き、0に近いほど無関係です。
| 組み合わせ | 相関係数 | 読み方 |
|---|---|---|
| 女性管理職比率 × 男女の賃金の差異 | −0.01 | 無関係 |
| 女性管理職比率 × 男性の育休取得率 | 0.11 | ごく弱い関係 |
| 男性の育休取得率 × 男女の賃金の差異 | 0.11 | ごく弱い関係 |
女性管理職比率と賃金の差は、−0.01。ほぼ完全に無関係でした。
「女性管理職が多い会社を選べば、給与の差も小さいだろう」という予想は、274社で数えたかぎり成り立ちません。この2つは別々に確かめる必要がある、というのがこの記事のいちばん大事な結論です。
女性管理職比率で会社を4つに分けても、賃金差は動かない
274社を女性管理職比率で4つの帯に分け、それぞれの中央値を出しました。
| 女性管理職比率 | 社数 | 男女の賃金の差異(中央値) | 男性の育休取得率(中央値) |
|---|---|---|---|
| 5%未満 | 74社 | 69.9 | 81.4% |
| 5〜10% | 65社 | 72.5 | 88.9% |
| 10〜20% | 91社 | 68.8 | 90.9% |
| 20%以上 | 44社 | 72.0 | 84.4% |
賃金の差異は、いちばん低い帯(5%未満)で69.9、いちばん高い帯(20%以上)で72.0。差は2.1しかなく、しかも10〜20%の帯がいちばん低いという、順番が入れ替わる形になっています。右肩上がりにはなりません。
男性の育休取得率も同じです。81.4% → 88.9% → 90.9% と上がったあと、いちばん上の帯で84.4%に下がります。女性管理職比率が高い会社ほど男性育休も高い、とは言えません。
実例で見ると、はっきりします
女性管理職比率が20%を超えているのに、賃金の差が大きい会社があります。
| 会社 | 女性管理職比率 | 男女の賃金の差異 |
|---|---|---|
| しまむら | 20.2% | 43.2 |
| 共立メンテナンス | 20.1% | 51.5 |
| Sansan | 20.2% | 51.5 |
| 三菱UFJ銀行 | 29.2% | 51.7 |
| 北洋銀行 | 25.6% | 52.4 |
逆に、女性管理職比率が5%未満なのに、賃金の差が小さい会社もあります。
| 会社 | 女性管理職比率 | 男女の賃金の差異 |
|---|---|---|
| 大阪ソーダ | 4.1% | 85.2 |
| サカイ引越センター | 3.1% | 83.3 |
| コア | 3.3% | 83.0 |
| 西日本旅客鉄道 | 3.9% | 81.8 |
| ニーズウェル | 3.7% | 81.3 |
女性管理職比率が20%以上の44社だけを見ても、賃金の差異は43.2から90.8まで、47ポイントの幅でばらついています。つまり「女性管理職比率が高い」と分かっても、給与の差についてはほとんど何も分からない、ということです。
なぜこうなるのか。女性管理職比率は「管理職という一部の層に女性が何人いるか」の数字で、賃金の差異は「全社員の平均どうしの比較」だからです。管理職に女性を増やしても、全社員でみたときの職種や勤続年数の構成が変わらなければ、平均の差はあまり動きません。ものさしが測っている場所が違う、と考えると分かりやすいと思います。
3つの指標の、全体の姿
274社の分布はこうなっています。
| 指標 | 下から4分の1 | 中央値 | 上から4分の1 |
|---|---|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.5% | 9.6% | 15.2% |
| 男性の育休取得率 | 71.0% | 86.4% | 100% |
| 男女の賃金の差異 | 63.4 | 71.3 | 76.8 |
読みどころは3つあります。
男性の育休取得率は、100%以上が75社(全体の27%)あります。 100%を超えるのは、その年に子が生まれた人数より休んだ人数のほうが多かった場合(前年に生まれた子で今年取得した人がいる等)に起きます。数え方の都合なので、100%を超えていることじたいは驚く数字ではありません。いっぽう50%未満の会社も23社あります。ここは会社によってはっきり分かれています。
男女の賃金の差異は、90以上が1社だけ。 花王の90.8です。逆に60未満が49社(18%)あります。中央値が71.3ということは、多くの会社で女性の平均賃金は男性の7割ほど、ということになります。
女性管理職比率の中央値は9.6%。 上位はソラスト47.2%、エイチームホールディングス46.7%、ノバレーゼ42.9%、SGホールディングス37.3%と続きます。
この数字を読むときの注意
いちばん低いベイカレントの17.8は、数え方を知らないと誤解します。ベイカレントは持株会社で、提出会社(単体)の従業員は866名。この17.8は、アルバイトスタッフを含むパート・有期労働者まで入れた「全労働者」の数字で、有価証券報告書には正規雇用労働者のみでは22.5、パート・有期労働者では76.2と書かれています。
「男女の賃金の差異」は、誰を数えたかで大きく変わります。 気になる会社の数字を見るときは、必ず出典の原文でどの範囲の数字かを確かめてください。福利厚生JPでは全社に出典リンクを付けています。
会社を選ぶときにどう使うか
この記事の数字から言えることは、ひとつだけです。3つの指標は、それぞれ別のことを測っているので、まとめて1つの「女性が働きやすい度」にはできません。
- 入ったあとに昇進の道があるかを知りたい → 女性管理職比率
- 共働きで家庭を回せるかを知りたい → 男性の育児休業取得率
- 同じ会社のなかで給与にどれくらい開きがあるかを知りたい → 男女の賃金の差異
気になる会社について、この3つを別々に見てください。福利厚生JPでは各社のページに3つとも載せていて、女性管理職比率・男性の育休取得率・男女の賃金の差異のランキングも用意しています。
この記事の数字について:2026年9月3日時点で福利厚生JPが公開している企業ページ1,082本をすべて読み、有価証券報告書を出典として3指標がそろっている274社を対象にしました。同じ指標を公式サイトのESGデータ集などから載せている会社まで広げると444社になりますが、数え方が会社ごとに違うため、この記事では有価証券報告書の数字だけを使っています。数値はすべて提出会社(単体)で、連結ではありません。「男女の賃金の差異」は、男性の平均賃金を100としたときの女性の水準です(数字が大きいほど差が小さい)。中央値は小さい順に並べた真ん中の値、「下から4分の1」「上から4分の1」は25%点と75%点です。相関係数はピアソンの積率相関係数です。相関は「一緒に動くかどうか」であって、原因と結果の関係ではありません。 各社の決算期は2025年6月期〜2026年3月期が混ざっています。
なお、この集計を作る過程でLINEヤフーの2指標を差し替えました。女性管理職比率はグループ全体の24.0%、男女の賃金の差異は「男女の平均年間給与(中央値)の比率 1.19:1」という、他社と数え方も単位も違う数字を載せていました。有価証券報告書の提出会社(単体)の数字(女性管理職比率18.6%、賃金の差異79.5)に揃えています。
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